M-1グランプリ2017 ジャルジャルの時代を待つ。

【史上最もハッピーな大会】

優勝者

*1

結構経ってしまいました。決勝戦が行われたのが12/3なので、1週間。この1週間ずっと余韻に浸っていました。こんなにも多幸感にあふれる大会はいままでなかったと思います。出場した全組が埋もれることなく、それぞれに輝いていたと思いました。さらに、ラジオ等でのコメント等から新たに感じたことなども合ったりして、今更ながら、ちょっと書いてみようと思います。

・敗者復活戦

ここはもう本当にスーパーマラドーナが圧勝でした。そもそも前回書いたように準決勝で落ちたことがまずおかしかったのですが、敗者復活戦でも、一組だけずば抜けて仕上がりが違ったように感じます。それが2位のハライチに2倍以上の得票(23万票)にもつながったと思います。ただ、準決勝のネタ時間が4分なのに対して、敗者復活戦のネタ時間は3分。敗者復活戦をテレビで見られることは非常にうれしいのですが、にしても、そこは、ネタ時間4分にしてほしい。準決勝に照準を合わせていたのに、敗退して急遽3分のネタを仕上げなければならず、その結果、敗者復活戦で、戦うことすらできなかったコンビが多かった。囲碁将棋、見取り図、ニューヨークが面白かった。

で、スーパーマラドーナが勝ち上がるわけですが、敗者復活戦はテレビで中継されています。M-1後の12/7のABCラジオ「ダイアンのよなよな」の中で、

武智「ホンマは敗者復活でやったネタを決勝でやりたかったんやけど、敗者復活って全国ネットでしょ。で、決勝本番までは2時間ある。で、決勝の観覧にくるお客さんってたぶんその日は敗者復活まで見てからくる。そう考えると、できなかった。(中略)一回(敗者復活で)やったことで自分たちの中でケチもついてたし。」

「もし、何かしらのかたちで敗者の時のネタを温存出来てたら、とろさんがおちてたかもしれんなっていう・・・」

とことんついてない。。。スーパーマラドーナに関しては後述します。

そして、本戦。

前説のレイザーラモンくまだまさし、BKBが慌てて逃げていくところが見切れてて、走ってるところにプロを感じました。そりゃ、ワイドナショーで松っちゃんも言及するわ。

オープニング映像がとにかくかっこよすぎた。マイクの前という戦場に向かう芸人の顔、他の芸人のネタを見る顔、ネタ合わせをする姿。どれもこれもかっこいい。M-1をここまでの聖地にしてきた歴史をなぞりながら、今大会の出場者にまで到達する。個人的に2007年に敗者復活で上がってきたサンドウィッチマンに敗れて涙を流すキングコング西野にグッと来てしまいました。キングコング、ENGEIグランドスラムとかTHE MANZAIには出ないのかな。そういえば、来週はTHE MANZAIウーマンラッシュアワーがテレビで本気のネタやるのここしかないから楽しみ。THE MANZAIに関しては思うところが多少あるのでまた書こう。

上沼恵美子に関しては、議論しつくされてると思うんですけど、やっぱり島田紳助の不在をこの二年で払拭しきったことの功績は凄いと思います。松本人志の審査への注目度をいい意味で和らげながら、自分が批判される覚悟で向き合うの信頼できます。あと、後日、一組一組の点数についてじっくり説明した大吉先生、聞けば聞くほどに本当に信頼できるし真摯だなとおもいました。ただ、歴代王者の審査もそれはそれでやっぱり気になる。

M-1の感想をだらだらと – NON STYLE 石田 ブログ「笑って笑って笑いまくり人生」

トップバッターのゆにばーすM-1で優勝したら引退すると公言していた川瀬名人。本当にトップバッターじゃなかったときの点数が気になるというトレンディエンジェルたかしの発言に大きく頷いた。一つのラリーに一つずつ笑いを入れていきその一つずつの強度が強くて、展開も良いし、自分たちにしかできないネタで、正直順番以外完璧だった。ゴッドタン、有田ジェネレーションと深夜帯には確実にハマってきてるから、どんどんキャラクターが乗ってくるんじゃないか。ただ、決勝直後のGyao!の番組で、敗因を順番ではなく実力と言い切る川瀬は筋が通りすぎていて、かっこいいと思った。

カミナリは、去年のインパクトが凄すぎた上に、たくみ君のツッコミワードの角度次第というところまでばれてしまっているから相当ハードルは高かったんじゃないか。こうなってくるとM-1で勝つには一回スタイルを変更しないといけないから大変なような。でも、期待値が高いからこそ、それをどう超えるのかはたまた裏切るのか楽しみ。

とろサーモンに関しては、これまでの15年の蓄積と希望を一身に背負ったからこそのネタと評価だったんじゃないでしょうか。優勝したのがとろサーモンで本当に良かったと思います。決勝ラウンドでは和牛とどっちが優勝しても良かった、その最後を分けたのは、どっちにこれから幸せになってほしいか、報われてほしいかという審査員の人間味だったんじゃないでしょうか。それが、リーダーの涙に現れていたと思います。和牛だろ、って声もありましたけど、それ以上に祝福が多くて、温かく終われたし良かったです。今までのとろサーモンのイメージなら、負けて「クソが」って久保田が言うイメージなんですけど、今回の大会でその負けても笑わせる空気にしてなくて、本気で本気だったのがすごくよかったんじゃないかと。負け犬という退路を断っていたのがよくて前を向いて戦っていたのが良かった。どうでもいいですけど、復活後のM-1チャンプ全員メガネかけてますね。どうでもいいんですけど。

あと、とろサーモンの優勝で思い返すのが、先日のIPPONの関連番組で、バカリズム、小木、設楽の3人がトークしていたやつで、「面白い芸人はいつか売れる」理論がいかに残酷かという話の流れの中で、「悪いのは小峠」という話になっていましたが、とろサーモンの優勝によってまたその理論の被害者が増えてしまうのでは、という。でも、「面白いやつはいつか」理論も込みで優勝に感動してしまうわけですが。

スーパーマラドーナは、敗者復活での「ミナミの帝王」ネタが出来なかったことが残念でしたが、逆にいうと、来年用のネタが一本すでにある状態なので、来年のラストイヤーにすべてをぶつけてほしい。実際、とろサーモンもミキも決勝のファイナルステージで披露したのはその前年までの敗者復活で披露したネタでしたし。

とにかく優勝して聴きたい。

「俺が一番M-1のこと思ってんねん」

「よなよな」でも言っていましたが、ここからの一年は死ぬ気でネタ作って生涯のベストネタ二本作って悔いなく終わりたいと。武智がいかに努力してきたかを知る芸人も多く、ギリギリまで積み上げてそれについていく田中もやっぱりすごい。

ただ、それにしても、THE MANZAIスーパーマラドーナが呼ばれないのが意味が分かりません。夜のゴールデンでやる本戦じゃなくてプレマスターズの方さえ出られないの全く分からない。基準がわからない。。。

かまいたちは小朝師匠の言ってたことが少しわかる。勝ち切るネタというよりも、安定して面白いネタだったような気がしてしまった。ただ、今年、ほぼ完璧な一年で、勝ち様も負け様も見せてて間違いなく主役だったと思う。

マジカルラブリーは、上沼さんのおかげでオファーが増えているらしいので、良かったんじゃないかと。お笑いファンとそうでない人の間で、知名度がかけ離れすぎているのがたとえばマジカルラブリーやGAG少年楽団なのかな。ネタのなんとなくの雰囲気だけでも、分かっていれば見方も変わるんじゃないかと。野田クリスタルがトリッキーなタイプでネタも「これ漫才か?」と思ってしまいそうなネタをやることが知られていたら、つかみで笑いも起きていたはず。GAGも宮戸が女装することが浸透していれば、コントの世界にすーっと入れる。その差はやはり大きいなと感じた。カミナリに引き続き、上沼恵美子にハマらなかった枠。つまり、今後のM-1にも登場しそうなわけだから、これから楽しみだ。

さや香。3年目で会場をあれだけ包み込めて、どんどん笑いが増幅していって、ウケにウケたのに審査員の点数には90点が並んだ。つくづくM-1とはただウケればいいのではなくて発明なりオリジナリティが評価に直結するんだなと。わかりやすさを取るとベタになるし、そこを捨てると安定できない。大吉先生がたまむすびで言っていた手本にしている芸人がちらつくというのはおそらくチュートリアルなんじゃないかと思うけど、ウケ量が審査の基準ではないなら、ミキにあれだけの得点を入れるのは???となった。さや香がボケの新山でひたすら笑いを取る図式だからなのかなとかちょっと思ったり。

 そうなると、ミキはツッコミのおにいちゃん昂生でほとんどの笑いを起こしてて、ただテンポが速すぎて、かと思いきやめちゃくちゃベタで、その緩急がすごいな。ミキがあトップだったら何点だったのか気になる。。

和牛。この3年、誰よりもM-1でネタをやっていて、その全部でパターンを変えてあらゆる見せ方をしてきて、今年は、3回戦から全部ネタを変えて挑んだ。それでも、届かないチャンピオンの座。THE MANZAIも出てたし。本当に全部面白いのに。今年に限って言うと審査員が増えなかったら優勝してたわけで。とろサーモンよりも先にでてたら、旅館のネタを先にやって、後に結婚披露宴をできたのかもしれなかった、という大吉先生の推察も込みで、とろサーモンに笑神が道を開いたんだと思う。たぶん10回やってたら、9回は和牛が優勝してたと思うけど、あの日だけは、本当にとろサーモンがつかんだ。来年の和牛楽しみだけど、正直過去のパターンを変換するだけでも十分すぎると思うし、笑い飯のようになってもそれはそれでいいんじゃないかと思う。

ジャルジャル最高。後にも書きますが、ジャルジャルがゴールデンでゴリゴリのお笑い番組をやれていないこの国のテレビ界、どうかしてる。正直、今回ジャルジャルのことを誰かに話したくて、書いてるようなもんです。

ここで、少しジャルジャルと漫才について。

M-1 2010で決勝に初めて進出したジャルジャル

その時のネタが、福徳のボケに対して後藤が早くツッコミ過ぎて、それを指摘された後藤が「ボケを知っている」「いっぱい練習したからな」と返す部分が前半にあって、それが結構な掟破り、漫才をバカにしてると言われてしまった。カウス師匠は「低すぎるか~?」といいながら79点を付けていましたね。

そして、2015年のM-1。あの形は2013年のABCグランプリでもやっていたのですが、全国ネットではやはりM-1まで。

2015年のM-1でファーストステージでもう完璧としか言いようのないネタをやりました。あの漫才、形式美出はダントツの1位です。美しかった。でも、2本目はその形式の美しさ故にはかなく散り3位となりました。

2015年のM-1直後に収録された「ブラマヨとゆかいな仲間たち アツアツ」。ゲストはジャルジャル。2015年は審査員が歴代王者で、ブラマヨ吉田もそこにいた。ここに、ジャルジャルの漫才への捉え方がはっきりとありました。漫才は事前の稽古や打ち合わせをせずに二人の人間が台本なしで等身大で会話をする、というもの。でも、「どっちがネタを書いてるの?」の質問や、ネタ合わせの光景が映ってるということへの違和感はあると。だから、2010年の漫才もバカにしたわけではなくセーフだと思った、と。

ジャルジャルはめちゃめちゃ真面目だと思う。というか、ジャルジャルはパブリックイメージで「尖ってる」「シュール」「世界観」というものがあまりにも先行しすぎている。結構ベタなのも多いのに。何をやっても「ジャルジャルワールド」で片付けられてしまうのは少し酷ではないか。漫才の原義を考えてそこからどう飛躍するかで戦う。シュールを盾に逃げてなんかいないですよ。

そして、2017年のM-1ジャルジャル圧巻でした。ゲームを持ち込むことで、稽古感や打ち合わせ感を排除し、等身大だし、そもそものとてつもない発明もあって。ちなみに、大吉先生がいってたもうひと展開欲しがってしまうというのは、「ピンポイント」的なゲームから少し逸れたワードが後一つでも入っていれば、、、ということなんだと思いました。でも、あのネタをどこから発想して、なんであれを掘ろうとしたのか、天才過ぎて感動します。どこから手をつけるんだろう。。しかも、あのネタでM-1を戦うのがまたすごい。あのネタ、誰でもできるみたいな意見をどこかでちらっと見たんですけど、本当に何もわかっていない・・・あのネタを生み出すことはもう尊き事。正直、ジャルジャルは誰かから評価してもらうんじゃなくて、ジャルジャルそのものが基準を作ったりしていかないといけないと思います。あのネタを6位のネタとして片付けられてはお笑い界に未来はないと思います。せめて、松ちゃんが最高点つけてくれたことが良かった。あと、巨人師匠が93つけてたのも相当驚いた。あの人の姿勢すごい。

 

「アツアツ」、「アメトーーク反省大賞」で、自分たちを「人間味がない」と言っていたジャルジャル。しかし今回のM-1 2017終わり。点数にショックを受けて泣きそうになる福徳と、気丈にボケてみせる後藤。

「おまえ、今、ようボケれんなあ」

ここまでの人間味が出るようになったジャルジャル。今大会一番熱かったフレーズでしたよ。

決勝の次の日に収録されたAbemaTVのエゴサーチTV(MCはキンコン西野)内で、あのシーンについて、

福徳「(あのネタは)まさに誰もが笑うネタ。誰も傷つけない笑い。まさにこれだ。誰も傷つけず、笑いをとった。誰も馬鹿にしてない。自分ら二人だけで完結した。

めちゃくちゃ平和なネタ。

老若男女にウケる。

点数振るわへん。

泣きそー。」

M-1終了直後のGyao!特番で、銀シャリ橋本の「それ、2位になった人の泣き方やから。お前6位やねんから」ってツッコミが最高すぎたことも書いておきますね。

 

個人的にはジャルジャルは一つルールがある中でそのルールのギリギリをつくのが天才的にうまいと思うので、やっぱり漫才が向いてると思うし、もっと言うと、ジャルジャルをメインのバラエティは確実に受け入れられると思う。本当にいいスタッフさん手を挙げてほしい・・・

ああ、もう本当に、ジャルジャルを軸に、ざっくりハイタッチのようなゴリゴリのお笑い番組も、めちゃイケみたいな王道もやってほしい。テレ東さん、お願いします。ざっくりハイタッチとジャルジャルの番組やってください。本当に。

少人数で毎回ゲストを変えて、コントする番組なり、何かを生み出す番組なりをやってほしい。。。ゲストに中川家を呼んでみたりしてほしい。にしてもエゴサーチTVで驚愕したんだけど、ジャルジャルに一切のオファーが今のところないってのは本当に頭おかしいので何とかしてほしい。

どうにかできたりしないかな。

 

M-1に関して総括して言うと、今回全組何かしらで良い部分があったし、全組売れてほしいなと思うんですけど、和牛とかってここまでくると、優勝するまでに呼ぶのが失礼なんじゃないかみたいになりそうな気がする。優勝した人を優先するのは当然だし売れるべきはチャンプなのですが、自由に何組でも、何位のコンビでも呼んであげてよ。今回本当に全組良かったんだから。

最近、フジテレビの『ネタパレ』は、順位に関わらず、賞レースのファイナリストを呼んでくれるので良い番組だなと思ってます。

今年のM-1。全員が輝いた最高の大会だったと思ってます。来年はスーパーマラドーナジャルジャルがラストイヤー。また最高の大会になりますように。楽しみです。